グレープフルーツを食べなさい

「誰なんだろう、あの人。気になるー。休憩時間中だし、仕事の相手とは限らないですよね。ひょっとして……彼女とか? でも、ちょっと人妻っぽい気もするしなあ」

 ゴシップ好きの響子の目が爛々としている。……これは、今にも上村に突撃しそうな勢いだ。

「ちょっと、止めなよ響子?」

「どうしてですぅ? 三谷さんは気にならないんですか?」

「気にならないっていうか……」

 そう響子に言った瞬間、たまたま顔を上げた上村と目が合った。彼は私を見つけると、わずかに眉をひそめた。私はそんなつもりで見ていたんじゃないのに、いちいち詮索するなと言われたような気になる。

「別に、気にならないわ」

 そうだ、私がそんなこと気にしたって仕方がない。いくら私が心配したところで、肝心なところで結局上村は私を拒むのだ。どこか投げやりな気持ちで上村たちに背を向け、私はエレベーターの方へと歩き出した。