……結局、ここで私は諦めてしまう。どう考えたって、今優先すべきは母だから。でもこんなチャンス、もう二度とないんだろうな……。
珈琲を飲むのも忘れ、一人で延々と堂々巡りを繰り返していると、コツコツと玄関のドアを叩く音がした。
「はい」
「俺」
ドアフォン越しに上村の声がする。ドアの鍵を外すと、スーツ姿の上村が入ってきた。
「あれ、今日仕事だったの?」
「そう」
そう言って、いつものように無表情でビニル袋を渡す。
「ありがと。上村ほんとに好きね、グレープフルーツ。家でも食べてるの?」
「食べないよ。剥くの面倒くさいし」
ネクタイを緩めながら、上村は勝手にリビングのソファーに腰を下ろす。その姿も、すっかりこの部屋に馴染んでしまった。
「面倒くさいから、私のところで食べてくのね」
私はキッチンに向かい、包丁とまな板を取り出した。上村がこの部屋に来るようになった頃は、もらったグレープフルーツを半分に切ってスプーンで掬って食べていたけど、今では一房ずつ綺麗に切り分けられるようになった。
珈琲を飲むのも忘れ、一人で延々と堂々巡りを繰り返していると、コツコツと玄関のドアを叩く音がした。
「はい」
「俺」
ドアフォン越しに上村の声がする。ドアの鍵を外すと、スーツ姿の上村が入ってきた。
「あれ、今日仕事だったの?」
「そう」
そう言って、いつものように無表情でビニル袋を渡す。
「ありがと。上村ほんとに好きね、グレープフルーツ。家でも食べてるの?」
「食べないよ。剥くの面倒くさいし」
ネクタイを緩めながら、上村は勝手にリビングのソファーに腰を下ろす。その姿も、すっかりこの部屋に馴染んでしまった。
「面倒くさいから、私のところで食べてくのね」
私はキッチンに向かい、包丁とまな板を取り出した。上村がこの部屋に来るようになった頃は、もらったグレープフルーツを半分に切ってスプーンで掬って食べていたけど、今では一房ずつ綺麗に切り分けられるようになった。


