グレープフルーツを食べなさい

「ご、ごめん。大丈夫よ、コーヒーくらい自分で淹れるから……」

 変に意識してしまった自分が恥ずかしくて、思わず上村の手の中のコーヒーフィルターを奪い取った。

「……先輩」

 背中越しに声をかけられて、胸が音を立てる。全身で上村の気配を感じていた。

「先輩、本当は大丈夫なんかじゃないんでしょう?」

 答えたくなくて、シンクの淵を両手をきつく掴んだ。上村には背を向けたまま俯いて唇を噛みしめる。

 お願いだからこれ以上私に優しくしないで。目の奥から、涙がじわりと溢れてくるのがわかった。

「先輩、こっち向いたら?」

 いつまでも動こうとしない私に業を煮やしたのか、上村は私の肩を掴み、無理やり体を引き寄せた。私と向かい合った上村の表情が驚きで固まっている。

「先輩……泣いてる」