来た時と同じスクランブル交差点で信号待ちをしていると、道路を挟んだ向こう側に浴衣姿の女性を見つけた。
まだ大学生くらいだろうか、恋人らしき男性と仲良さそうに話している。
歩行者信号が青になり、私は浴衣の彼女を目で追いながら上村の後ろをついていった。
すれ違いざまに、はぐれないようどちらともなく手を繋ぐ二人の姿が目に入った。
横断歩道を渡りきり、私はほんの一瞬だけ目を閉じた。彼女が締めていた緋色の帯が、残像となって目蓋の裏に残っている。
母はきっとあの二人のように、私と鳴沢さんが仲良く寄り添って歩く姿を想像しながら、あの浴衣を仕立てたのだろう。
私はそんな些細な母の願いも叶えてあげられなかった。今朝見た母の静かな寝顔を思い出し、胸が痛む。
「先輩、どうかしたんですか?」
なかなか進もうとしない私を不審に思ったのか、少し先で私を待っていた上村がこちらへ戻ってきた。
「ごめん、なんでもないの。行こう」
「先輩……浴衣」
まだ大学生くらいだろうか、恋人らしき男性と仲良さそうに話している。
歩行者信号が青になり、私は浴衣の彼女を目で追いながら上村の後ろをついていった。
すれ違いざまに、はぐれないようどちらともなく手を繋ぐ二人の姿が目に入った。
横断歩道を渡りきり、私はほんの一瞬だけ目を閉じた。彼女が締めていた緋色の帯が、残像となって目蓋の裏に残っている。
母はきっとあの二人のように、私と鳴沢さんが仲良く寄り添って歩く姿を想像しながら、あの浴衣を仕立てたのだろう。
私はそんな些細な母の願いも叶えてあげられなかった。今朝見た母の静かな寝顔を思い出し、胸が痛む。
「先輩、どうかしたんですか?」
なかなか進もうとしない私を不審に思ったのか、少し先で私を待っていた上村がこちらへ戻ってきた。
「ごめん、なんでもないの。行こう」
「先輩……浴衣」


