グレープフルーツを食べなさい

「上村、今日はありがとう。ごちそうさまでした」

 結局、食事は上村がご馳走してくれた。私の手料理へのお礼にしては高くつき過ぎたようでなんだか気が引けてしまう。

「どういたしまして。あの店って料理もうまいけど、シェフもなかなかいいキャラでしょ?」

「ほんと! 見た目はごつい格闘家みたいなのに、作るお料理はどれも繊細で本当に美味しかった。お話も面白いし」

 そう興奮気味に話す私を、上村が優しく見下ろす。初めて見る表情に一瞬胸が音を立てた。

「よかった、元気出たみたいですね。最近疲れてるみたいだったから、先輩」

「や、やだ。会社でもそんな顔してた?」

 パチパチと頬に手を当てて、慌てて近くのショーウィンドーを覗き込んだ。やだな、目の下にクマでもできてたりする?

「いえ、誰も気づいてないとは思うけど」

「そうなんだ。それなら良かった」

 上村の言葉に、ホッと胸をなでおろした。会社の人にまで心配かけるのは本意じゃない。