グレープフルーツを食べなさい

「お客様の顔?」

 意味がわからず、私は上村を覗きこんだ。でも、上村と視線は合うことなく、表情からも何も読み取れない。

「どのお客様もこのお店の料理に心から満足してる。みんな親父の料理が好きでこの店に来てる。この店を新しく作り変えるのではなく、お互いのいいところを取り入れた店を作りませんか、って……」

「オーナーがこれまで築いてこられた伝統を守りつつ、保さんの画期的なアイデアをいかせる店をこれから作ればいいんです。お二人の夢を現実にするために僕らがいるんですから」

 その瞳の力の強さに驚く。……上村はこんな顔をして仕事してるんだ。

「今まで以上にお客様を呼べるお店を一緒に作りましょう、保さん」

「はい!」

 再び比良さんが上村に握手を求めた。希望に溢れた顔で、固い握手を交わす上村と比良さんのことがとても眩しく思えた。