グレープフルーツを食べなさい

「あ、おいしい!」

「それはそれは、ありがとうございます」

 比良さんはまたしても太目の眉を下げ、ニコニコしている。

 ああ、この人は本当に料理が好きで、料理で人を喜ばせたいんだな。比良さんの笑顔は、そのことを窺わせる生き生きとした笑顔だった。

「お料理は任せてくださいましたけど、デザートだけは上村さんからのリクエストで。本当はメニューにないものなんですけど、急遽作ったんですよ」

 そう言って比良さんは私にウインクをする。

「えっ、わざわざ?」

 上村は私の言葉には答えず、黙々とデザートを口に運んでいる。

「そんなことくらい、上村さんが僕にしてくれたことに比べればお安い御用ですよ。ここでの仕事にやりがいを感じられなくなっていた僕を救ってくれたのは上村さんですから」

「……どういうことですか?」

 上村は相変らず涼しい顔でコーヒーを口に運んでいる。わけがわからずにいる私に、比良さんは続きを話し始めた。