グレープフルーツを食べなさい

「今日はお二人ともお客様なんですから。さあこちらへどうぞ」

 店の奥へと進む比良さんについていく。私と上村が通されたのは、窓からお店の中庭が見えるこじんまりとした個室だった。

「お店混んでるのに、なんだか申し訳ないね」

「ん、そうですね」

 比良さんのあの握手といい、わざわざ用意していてくれたこの個室といい、比良さんは上村のことをとても気にいっているように見えるのに、上村はどうしてこのレストランとの契約にあんなに手こずっていたんだろう。上村と食事をする間も、ずっとそのことが気になっていた。

 食後のデザートとコーヒーは比良さんが直々に運んできてくれた。シンプルなガラスの器の中の艶やかな果肉に目が釘付けになる。

「デザートはグレープフルーツのマリネです。どうぞ」

 真っ白なブランマンジェの上に、ピンクと薄い黄色のつやつやとしたグレープフルーツが交互にのっている。その内の一欠片を私はスプーンで掬い頬張った。