グレープフルーツを食べなさい

「はいはい。そういうことにしておいてあげるわ」

「もう母さんったら、すぐ私のことからかうんだから」

 そのとき不意に母の顔から笑顔が消え、ゆっくりと目蓋を閉じた。

「ごめんなさい香奈。ちょっと疲れたみたい。……眠たいの」

「それじゃあ私はそろそろ帰るね。ゆっくり眠って、母さ……」

 私が最後まで言い終わらないうちに、母はもう寝息を立てていた。

 ここ最近の母は、私が来てもすぐ「疲れた」と言って眠ってしまう。起きていると思って声をかけても、たまに夢なのか現実なのか区別がつかない時もあるようだった。

 それが薬のせいなのか、それとも病気の進行のせいなのか私にはわからない。

 眠ってしまった母を起こさないように、私は静かに病室を後にした。