グレープフルーツを食べなさい

 目を閉じて、何度も深呼吸を繰り返す。大丈夫、きっと母さんは大丈夫。呪文のように心の中で何度もそう唱えた。

「ご、ごめん上村。大丈夫だからもう離して」

 冷静さを取り戻すと、上村に縋りついていることが急に恥ずかしくなって、上村の胸を押して自分から離れた。

「ほんとに大丈夫?」

「うん」

「よかった。俺、車回してきますから、用意できたらすぐ降りてきてください」

「わかった」

 部屋を出る上村をその場で見送り、鞄に財布とスマホだけ投げ込むと、私もすぐに上村を追いかけた。