グレープフルーツを食べなさい

「……先輩、どうかしたの?」

 着信は母の病院からだった。スマホを見つめたまま微動だにしない私を、上村が訝しげに覗きこむ。

「先輩?」

 目の前を上村の手のひらがひらひらと舞って、我に返った。

「母さんの病院からだわ。どうしよう、上村」

 発した声が震えていた。スマホを片手に固まったまま、早く電話にでなきゃと思うのに、どうしても指を動かすことが出来ない。

「どうしよう、母さんに何かあったんだ。どうしよう、どうしよう……」

「貸して!」

 体を震わせて取り乱す私からスマホを奪うと、上村は私の代わりに電話に出た。

「はい、三谷です。はい……、はい、わかりました。すぐにうかがいます」