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俺はその日を境に、ヒヨコと呼ぶようになった。

ヒヨコは後輩なこともあり、皆の前では「先パイ」と呼ぶが、2人きりの時は「リク」と呼んでくれる。

小さくて儚い彼女を、俺が守りたい。

俺らの関係は、順調だった。



しかし最近。

俺の前に現れる女がいた。



俺はクラスで学級委員を務めている。

その女は、生徒会長だった。


3年生で、名前は

楠木梓(くすのき・あずさ)。



「楠木先輩」と呼ぶと怒るので、「梓さん」と呼んでいる。

梓さんは、何かと理由をつけて、俺を夜遅くまで残そうとする。

そのため、最近俺はヒヨコと帰っていない。

「今日一緒に帰れない」とヒヨコに告げると、ヒヨコは決まって悲しそうな表情を浮かべ、頷いて帰って行く。

その顔を俺は見たくない。

ヒヨコに悲しそうな顔をさせるために、俺はヒヨコと付き合ったのではない。

ヒヨコの花のような笑顔を守るため、俺は付き合ったのだ。

意味ないではないか。



今日も、俺は梓さんと残って、明日クラスで配る書類をホッチキスで止めている。

ヒヨコには危ないから、先に帰らせた。

俺だって、ヒヨコと帰りたいよ・・・。