無理して笑うな


また拓真の驚いたような顔を見て俺は思わず笑った。




「笑うなよ。」




そう言いがら拓真も笑っていた。



俺達は離れていた6年間のことをお互いに話し合った。



俺は、私立中学を受験し流星に出会って今はバスケ部に所属していること。



拓真は、お姉さんの葉月さんが退職した父親の後を継いで社長になり自分もモデルになったこと。



俺は6年前と同じように笑えたのが嬉しかった。




そのとき、きぃ…という音がして社長室の扉が開いた。



そこには黒いスーツをびしっと着込んだ女の人が立っていた。




「あ、姉さんおかえり。」




俺達は立ち上がった。




「ただいま。」




女の人はそれだけ言うと不思議そうに首を傾げた。




「えーと…あ、中村 悠斗君。

三島マネージャーから聞いてるわ。流星が入所希望者を連れてくるからよろしくと。」




「初めまして、中村 悠斗です。」




「初めまして。社長の太田 葉月よ。拓真とは知り合い?」




その言葉に俺達は同時に頷く。




「小学生のときの友達。たまたま会ったんだ。」




拓真が嬉しそうに言った。




「あら、それはすごい偶然ね。」




「あの、社長。」




俺が差し出した面接試験用紙を葉月さんが受け取る。



それを拓真が覗き込んだ。




「面接をお願い出来ますか。社長が最後なんです。」




「あら、私?」




太田社長は心底驚いているようだった。




「向井ったら、私に仕向けるなんて初めてね。面接かぁ…」




葉月さんは「うーん」と言うと、さっき拓真が座ってたところに座った。




「そうねぇ。三島マネージャーの声出しと神崎マネージャーの数学を乗り切ってるから特に言うことはないんだけど、あえて言うなら経験、かしら?」




「経験ですか?」




太田社長は頷く。




「向井が私に面接をさせるレベルなら、あなたは文句無しに合格よ。

でもそんなレベルがあるなら活動を始める前にある程度特訓が必要ね。」




太田社長はふふっと笑った。



俺は正直驚いた。



ぱっと見た感じ厳しそうな人だったから、笑わないものとばかり思ってた。




「ちょうどいいわ。悠斗、拓真のドラマ撮影についてきなさい。」