隆太さんは、ステージの上で固まる私を不思議そうに見ていた。
「…行けよ。」
そのとき後ろから聞こえてきた声。
その声は小さくて、きっと私以外の誰にも聞こえていない声。
『…だって、蓮斗くん。私はどうしたらいいのか分からない。』
私も同じように、本当に小さな小さな声で呟いた。
それでもその声をキャッチした蓮斗くんは、そっと私の真後ろに来て、楽譜を触りながら言う。
「どうしたらいいか、じゃない。どうするべきか、でもない。」
『え?』
つい、私は後ろをを振り向く。
そこにいた蓮斗くんは笑っていて、こう言った。
「大事なのは、自分がどうしたいか。だよ。」
言葉と同時に蓮斗くんはそっと私の背中を手で押した。



