「陽菜っ!!」
活気に溢れた体育館を見届け、前日くらいは邪魔者は消えようと自分なりに気を使って出口へ向かっていたときだった。
その声に、私はもう1度体育館に目を向ける。
視線の先には、バレーボールを持ちっぱなしの蓮斗君。
『こら。部長が簡単に抜けてきちゃダメだってーー。」
あははーと、誤魔化すような笑いをこぼした私。
……だって、蓮斗君が、すごい真剣な顔をしてるから。
『……な、なに。どうしたの??』
不機嫌にも見えるこの顔を、私は何度か見たことがある。
学級委員の押し付け合いで、回りを一喝したとき。
私が、部活鑑賞部をやらないって言ったとき。
そのときに、蓮斗君はこの表情をしていた。



