「んでさー?って、聞いてる?」
『…え、あ、き…聞いてるよ!』
1つの机を挟んで向かい合う形で作業する私たち。
もとから席が前後だということもあって、私が椅子の向きを変えただけなんだけどね。
初日から、学級委員は揃って名簿作りで居残り。
考え事をしていて半分話を聞いていなかった私は、慌てて相槌を打つ。
「うん、だからさー。俺、あーいう人に押し付ける奴。無理なんだよねー。」
どうやら、さっきの出来事のことを話してたみたい。
荒っぽくプリントに手を伸ばす様子から、蓮斗君のイラつきが伝わってきた。
「でも、望月みたいな、こういうの頑張ってやっちゃう人は無理じゃないよ。」
『…へ?』
「だって、明らかにキャラじゃないじゃん。」
そう言って笑う蓮斗君はさっきの怖い笑顔とは、打って変わって優しい笑顔を向けている。
私は、コロコロと表情が変わる蓮斗君がよく分からなくて、なんとなく身構えていた。



