【短編】髪にキス。




「蒼井もそんな熱いなら冷たいのにすればいいだろう。」


今だにフーフーと冷ます彼女から視線を外してデスクに戻ると、俺は何時ものようにそういった。


「いいの、ゆっくり飲みたいから。」


それっきり、俺たちは口を閉ざした。



カタカタとパソコンのキーボードの音が響く。


集中し始めた時にコーヒーの香りが漂って、彼女…蒼井が部屋にいることを嫌でも思い出させる。



俺は彼女以外の前でコーヒーを飲まなかった。