首に回る腕に、俺はもう我慢の限界だった。 「会いにこないとおもったら。」 「うん。」 「こんなに成長しやがって。」 「うん。」 「どれだけ待ったと思っている。」 「うん。」 「俺はもう三十路だぞ。」 「うん。」 うんとしかこたえない彼女に、俺はおもわず頬がほころんだ。 「泣くなよ、せっかく会えたのに。」 ふるふると震える背中をそっと撫ぜた。 あれだけ触れたくても触れられなかったのがバカみたいに。 しょうもなくて、それでもはっきりした境界にいた俺たちは今はもうただの男と女だ。