【短編】髪にキス。




「私はあの写真を撮るまで先生のこと見たこともなくて。

噂にきく美形保健医なんて狙ってるだろって思ってた。」


そう言ってくすりと笑うと、すこし不機嫌になった先生はマグカップを机に置いて、私の真正面に座った。


「でもね、先生を見たときほら、直感みたいな。

まぁそんなのすぐに忘れ去ってたんだけど。」


話をきって淹れてくれた紅茶を丁寧に冷まして啜る。


これが欲しかった。


鼻腔をくすぐるコーヒーの香り。


先生がいる証拠。