「おい。」

何かを熱心に眺めていた彼女はピクリと肩を震わせた。


「橋村、先生……。」


驚いたようにつぶやいた彼女は踵を返して逃げようとする。


逃がす気なんてさらさらない。


「髪にキス。」


そういうと蒼井はびくんと体を震わせて立ち止まった。


「…また紅茶を淹れてやるから。
明日必ず保健室に来い。」


なにも言わない彼女にため息をついた俺は、そっと歩み寄る。


ずっと後ろを向いたままの蒼井の綺麗な黒髪を一房掬い取った。