「橋村先生、こんにちは。」
俺にさえよくわからない水戸先生の予定を把握しているかのように、彼女はいつもやってくる。
少しウェーブのかかった黒髪をふわりとさせて、決まったようにそう言うんだ。
「橋村先生の紅茶、飲みたいな。」
「またか、不良め。」
彼女は俺のことを橋村先生、と呼ぶ。
他の生徒は、橋村仁の下の名前からジン君と呼ぶのに、彼女だけは違った。
ネクタイもきちんとしまっているし、スカートこそ短いがーーー、礼儀だって正しい。
そんな優等生な彼女も、ここに来る不真面目だけは真面目に、続けていた。


