ワックスか何かの香りが遠ざかると、私は何事もなかったように出口へ向かった。 「生徒が先生をからかうなと言ってるだろう。 もう来るなよ。」 いつも決まったように私の背中に投げかける言葉に私はいつもいつも、胸がつまる思いだった。 私が必ず先生と呼ぶように、必ず先生も蒼井すみれを生徒として見る。 そして、もう来るなと言う癖に。 「…ばか。」 私があらわれると少し唇を綻ばせるのをあなたは気づいているのだろうか。