【短編】髪にキス。




名残惜しく思いながら今日もそれを飲み干すと、私は立ち上がった。


「先生、そろそろ戻るね。」


いつも私はそう言って誘うように先生に笑いかける。


一歩一歩と近づいて、コーヒーの残り香を感じてドキドキする。


そして私は先生の黒髪に、そっとキスを落とす。


この時間だけは、ほんの数秒だけは、私は先生を男だと思ってるの。



髪にキス、その意味を彼は知ってるだろうか。


知っていて欲しい、でもやっぱり気づかないでーーーー。