「どうしたの?」
「別になにも」
目を合わせずに言えば、顔を莉乃の両手で挟まれ、莉乃の方を向かされる。
「ほんとは?」
不服そうな顔をしながらも心配そうな目を覗かせる顔を見て、莉乃から自分を背けることが出来なかった。
「………莉乃を世界で一番幸せに出来るのは他に絶対いないから」
「え?あ、ありがとう?」
「別に…」
予想外であっただろう言葉に少しだけ頬を赤く染めながら不思議そうに首を傾げる。
「それだけ覚えておいて」と言い残して、再び寝ている律の手を握ったり撫でたしていれば、ふふふっと笑い声が聞こえた後、ぎゅっと律ごと莉乃に抱きしめられた。
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