「…あ、あの!」 それから暫くして、廊下を歩いていれば突然後ろからかけられる声。 「……誰?」 振り向いた先にいた、その見知った姿につい意地悪したくなった。 壁を越えて飛び降りてきた君か。 そう言ってもよかったはずだけれど。 「2年5組の熊沢莉乃って言います!」 初めて知ったその名前を何度も反芻する。 少し顔を曇らせた後、まっすぐこっちを向いて自分の名前を言うその姿に、緩みそうな口をきゅっと引き締めた。