「あっ……!」
箱を開けるのを止めるような声を流し、そのまま箱を開ける。
確かにそこには、お世辞にも上手いとは言えない具合のショートケーキが鎮座していた。
「確かに不恰好…」
赤くてツヤのある苺がポツンとひとつ上に乗っていて、その形の良さが下のケーキの部分の不恰好さをより引き立たせている。
「……やっぱり、作り直してきます…」
そう言って箱を奪おうとする動作に対し、反射的に手を上にあげて避ける。
そして、崩れかけているケーキの先を摘むようにすくい、口へと運んだ。
「まぁ、味は別に悪くはないんじゃない?」
その言葉にあからさまに喜んだ表情を見せる。
「次はもっと形頑張りなよ」
「……はいっ!!!」
大きな返事と同時に、予鈴が響く。
「引き止めてすみません!!」と慌ててお辞儀して去っていく後ろ姿を見ながら、残された箱を持ち、教室へと自分も足を進めた。