3年の階と違って、もうすぐ昼休みも終わるにも関わらず、2年の教室は相変わらず騒がしい。


廊下にぱらぱらといる人を避けながら目的の教室の扉に手をかければ、タイミングを計ったかのように目の前の扉が開いた。



「わっ、ごめん……って、織部先輩!すみません!」



人の顔を見るなり、慌てて謝ってくる。そんな後輩をよそに教室を見渡してみたが、探しているその姿はなかった。



「ねぇ…」


「は、はい!なんですか!?」


「熊沢莉乃は?」



「それならあそこに…あれ?すみませんさっきまでそこにいたんですけど…」




不思議そうに首をかしげる武井。

そこにいた…という教卓に目をやれば、ちらちらと見える黒い髪。



…そういうこと。



「どうでもいいけど、それほど気が長くないって伝えといて」



そう武井に言い残し、教室の扉を閉めた。