「ほんと、気にくわない」


離れる莉乃をこれ以上逃がさないように、頭の後ろに手をやりぐっと引き寄せる。

その反動で躓くようにして胸に飛び込んで来たその体を受け止め、腕の中へと閉じこめた。



「ちょっ、待っ」


「待たない」



噛みつけば、逃げようとする。
どうせ捕まるのは分かってるのに、ほんとバカだよね。


言葉を真っ正面から受け止めて、そのまま理解するその純粋さ。

いつもへらへらと笑うその無邪気さ。


そんな白を染めるのは、莉乃にとっての黒でいい。

だから灰色だなんて、口が裂けても言わないけど。