「あの……少しお時間頂けますか?」


暫くそうやって歩いていれば、突然かけられた声。

マイクを持っているその人の後ろには、大型のマイクやカメラがいくつか並んでいた。




「あ、えっと、私たちですか?」


それに対して莉乃は、どう見てもテレビ局だと分かる人たちから声をかけられ、少し慌てている様子だ。



「はい。実は今、夫婦の事情暴いちゃいます!っていう番組の企画がありまして……お二方は、ご夫婦ですか?」


「いえ、違います」



めんどくさそうで、即答する。

そうすれば、さっきまで力強く握られていたはずの手がするりと抜けた。