「はい、取れた。」 手に乗せたクモを窓の外に出して、オレは振り返った。 コイツの顔をまじまじと見たのは、この時が初めてだったかもしれない。 涙目になりながら 「ありがと…」 って笑った倉永琉唯の顔をオレは今でも忘れてないんだ。 だけど多分、アイツは覚えてないから これはオレだけが知ってる まだ小悪魔になる前の倉永琉唯の記憶。