「足元、気をつけて」



ジーニアスはティアの手を取り、馬車に乗せた。


馬車が走り出し、ゲオルグの屋敷が遠ざかっていく。



ージーニアスが来てくれた。



ーゲオルグのもとから連れ出してくれた。



緊張の糸が切れたのだろうか。
ティアの瞳から涙がこぼれ落ち、指も震えだした。



「え?どうして…涙なんて…」



理由がわからず、戸惑うティアの肩をジーニアスは引き寄せて抱きしめた。



「もう大丈夫だから。もうティアはもう追手に追われることも、あいつと結婚することもないんだ」



ジーニアスは安心させるように語りかけ、ティアの頬を伝う滴に唇を寄せた。


ジーニアスが触れた箇所が熱を持ち、次第に心が温かく、幸せな気持ちに包まれていく。



ー私は嘘をついてジーニアスから離れたのに。



勝手にどこかにいかないという約束も破ったというのにジーニアスはティアを優しく包み込んでくれる。



「…っ、ジーニアス…」



「何も言わなくていい…ぜんぶわかってる。苦しい思いをさせてごめん、ティア。今度はオレがティアを守るから」



ジーニアスの優しさに触れ、ティアの涙はしばらくこぼれ続けた。