「...さ...かあ...母さん!」


耳元で声がして、あたしは目を開いた。


「もう、ずっと呼んでたのに、母さん全然起きないからさぁ...。」


そう言って口を尖らせるのは、あたしの大切な息子、永久。


「ったく、お前全然起きねぇって永久ずっと怒ってて大変だったんだぞ?」


そして、呆れたような表情であたしを見つめるのは...。


「織井...。」

「はぁ!?織井って...明音、お前が俺のこと織井なんて呼ぶの何年ぶりだよ。」

「え...あ、そうだった...。」

「ったく...一晩寝て忘れた訳じゃねぇよな?俺の名前。」


不満そうに言う私の夫。


「忘れてるわけないじゃん、輝。」


あたしがそう呼ぶと、彼はふっと笑った。