距離、0メートル。


その男と、すれ違う。

あたしたちはその瞬間、お互いに強く手を握った。

そして、顔を見合わせ、微笑んだ。



...見なくても、分かった。

確かに右手にあった体温が、失われていること。
愛しい君が、消えてしまったこと。
もう二度と、君に会えないこと。


涙が静かに頬を伝った。

もう、あたしがその男のせいで苦しむことはない。
それと同時に、繋を産むことはない。

後悔と申し訳なさが一気に襲いかかって来た瞬間、あたしは繋の手を握っていた方の手に違和感を覚えた。


あたしはその手をゆっくりと開いた。

そこには、指輪があった。


[I LOVE YOU FOREVER]


あなたを永遠に愛してる。



そう刻まれたその指輪を、あたしはギュッと握った。


「あたしも、繋を永遠に愛してる。」


そう呟いた瞬間、あたしの目からは止めどなく涙が零れた。