「キ、キ、キス!?」

「キス...ですか...。」


あたしたちは驚いたまま固まってしまった。


「ど、どうしますか...?」

「な、何が...?」

「キス、しますか...?」


繋の言葉がいつもより甘く感じる。


「...行こうぜ、観覧車。」


あたしは繋の手を引いて、観覧車へと向かった。


観覧車に乗る瞬間も、あたしは緊張が隠せなかった。
狭い狭い空間に二人だけ。
頂点にいくまでのこのうるさい鼓動が、繋に聞こえていませんように、と祈る。


「明音、さん。」


繋に呼ばれ、ふと周りを見る。
もう、頂点につく...。


「大丈夫ですか...?」


いつもの繋じゃないような声、表情。
だけど、こんな繋も好き、だなんてさ。


「うん...大丈夫...。」


なんだか、いつものあたしじゃなくなる。


「目、閉じてください。」


あたしは言われた通りに目を閉じる。

その刹那...


唇に柔らかい感覚。
そして、あたしたちはお互いの存在を確かめるように絡ませた。
熱い、熱い吐息。
あたしを撫でる優しすぎる繋の手。

あたしたちの恋は、これが精一杯。


忘れたくない。
今の時間を、一生。
繋だけを感じられる今を。
繋だけしか見えない、繋だけが愛しい。
こんな感情、初めてだ。

繋に出逢ってから、あたしは初めてのことばかりだった。

あたしは繋に全てを伝える。


「繋、大好き...っ。」

「僕は...愛してます...。」

「バカっそういう意味だって...。」


好き、好き、大好き、愛してる...。

この言葉が明日から、伝わらない。
それが辛くて、あたしは繋を抱き締めながらキスをした。