ずっとずっと、涙が止まらなかった。

繋があたしのためにいなくなる。
あたしが未来で繋に自分が苦しんでいるところを見せつけて、そのせいで繋は自分を犠牲にしようとしてる。

繋は生きることを望んでない。
それはあたしのせい。
あたしがあんな男のことを引きずっていたから。
繋を見てあげようとしなかったから。


「繋...嫌だ...繋がいなくなるなんてさ...。」


あたしの言葉に、繋は黙り込んでしまったが、しばらくして小さな声で呟いた。


「こんなはずじゃなかった...明音さんを悲しませるはずじゃ...。明音さんに出会わなきゃよかったですね。裏で動いてれば、こんなことには...。」

「ちげぇよ...言っただろ?出逢えてよかったって。あたしは...あたしは繋を失いたくないんだよ...。」


あたしの願いは、繋と共に生きること。
繋の願いは、あたしを幸せな未来に導くこと。
その二つの願い両方は叶わない。
あたしにとっての幸せは繋と一緒に生きること。
でも、未来のあたしは繋を幸せには出来なかった。


「明音さん、お願いです。僕のことなんか、忘れてください。」

「ふざけんな...っ。忘れられるわけねぇだろ。お前は...あたしの初恋の相手なんだよ!お前も言ってただろ?気持ちに答えたいって!」

「だから僕は明音さんの幸せを願うんです!僕は未来では明音さんを救えなかった。大好きな人を二度も不幸にするなんて...僕は耐えられないんです!」


泣きながらお互いの気持ちをぶつけ合う。
どうして二人が幸せにはなれないんだろう。


「あたしは絶対繋を幸せにする...だから...。」

「僕がこの時代から消えれば明音さんの記憶から今の僕は消えるんです!未来は変わらない。このままじゃ二人とも幸せになれませんよ!」

「どのみち繋は幸せになれねぇってことかよ。」

「明音さんが幸せになることが、今の僕にとっても未来の僕にとっても幸せです。」


繋の幸せは、あたしの幸せ...。
なんでこんな親孝行な子どもを、あたしは大切に出来なかったんだろう。

今のあたしに出来ることは、繋の言う通りにすることなのかもしれない。
それが繋を幸せに出来ることなら、あたしは...。


「分かったよ...繋の、言う通りにする...。」


あぁ、なんて子ども不孝な親なんだ。

そういうと繋は、ふっと微笑んだ。


「よかった。やっと、幸せになれますね。」


繋の泣き笑う顔に、あたしはまた、涙を流した。