眩しい光が瞼の奥を刺激する。
ゆっくりと目を開けると、カーテンの隙間からまばゆい光が差し込んでいた。

...もう朝か...。

...というか、ここ、織井の家なんだよな。
あたしは織井を部屋から追い出して、今まで閉め出していたということだ。
あぁ、申し訳ないことしてんな...。

上半身の体重を預けていたベッドは、あたしが体を離すとギシッと音をたてた。
ベッドの上を見ると、顔色が昨日より良くなっている繋が眠っていた。
額に手をあてると、まだ少し熱いが、微熱くらいにはなっただろう。

あたしは部屋を出て、リビングの方に向かう。


「起きたか、ヒーラギ。」


その声の方を見ると、織井が慣れた手つきで朝食を作っていた。


「あぁ、わりぃな、織井。部屋、結局入れてやらなくて。」

「いいよ、別に。俺んちのソファ、結構寝心地いいんだぜ。」


自慢気に言う織井は、きっとあたしが気を使わないようにしてくれているんだろう。


「繋は、どうだった?」

「まだ少し熱はあるみてぇだけど、昨日よりは下がってた。」

「そうか。ならよかった。」


織井はそう言って小さく微笑んだ。


「よし、もう少しで出来るから、椅子に座ってろ。」

「あ、あぁ。」


ダイニングテーブルの上に並んでいく朝食に、あたしは少し驚く。
織井って料理、上手いんだな。
まぁ一人暮らしなんだから何ら変なことはないけど。


「いただきます。」


二人で向かい合って朝食を食べる。
こう考えると、二人だけで飯を食うなんて、初めてだ。


「...ヒーラギ。」

「ん?」

「もう、繋には怒ってねぇか?」


織井があたしを真剣に見て言った。


「怒ってねぇよ。あたしが繋から逃げてたんだって分かったし、それに...あたし、今なら繋のこと信じられる気がするんだ。」


あたしはふっと笑って答えた。
織井はよく分からない、といった表情をしたが、すぐに「そうか。」と笑った。


そうだ、今なら。
今ならきっと、ちゃんと繋の話を聞いてやれる気がするんだ。
繋があたしの子どもだなんて、すんなり入ってくる話じゃないし、信じきれた訳じゃない。
だけど、それがどれだけ不可思議で突飛でも、あたしは繋の言葉を受け入れようとしたい。
その態度を、ちゃんと示して、繋が安心して話せる空気を作る。
繋が起きてきたら、あたしは繋の気持ちと真実を聞こうと思った。