携帯の時計を見ると、いつの間にか午前1時になっていた。


「...随分と早いな、時間が経つの...。」


家に帰る気にもなれない。
どうすればいいのかさえ、分からない。
繋があたしにあんな振り方をした理由だって。

フラフラとコンビニによって、雑誌を眺める。

すると、携帯の呼び出し音が鳴った。
織井からだ。


「もしもし?なんだよ。」

「なぁ、そっちに繋、行ってねぇか?」

「繋?来てねぇけど...。」


織井の声は、尋常じゃないほどの焦りを孕ませていた。


「繋が...繋がいなくなったらしいんだ。」

「いなくなった?」

「...ああ。『明音さんのことを傷つけるためにここに来たんじゃない』って、落ち着いたあとにそう言って走って出ていっちまったみたいでさ。」


あたしを傷つけるためにここに来たんじゃない。
その言葉の意味が、私には分からない。


「...ヒーラギ、今のお前にこんなこと言うのはおかしいと思うけどさ、相手の気持ちを理解しようとしてねぇのは、繋じゃなくてヒーラギなんじゃねぇか。」

「...どういう意味だよ。」

「繋はいつだってお前を思ってたろ。そんなアイツがお前をただ傷つけて逃げるわけねぇだろーが。」

「......。」

「焦らせて悪い。けど、今は時間がねぇ。繋は今、ちゃんと落ち着けてねぇまま行動してんだよ。ヒーラギ...繋と向き合え。ちゃんと、繋が言いてぇこと、聞いてやれ。」


織井はそう言うと電話を切った。

繋は何をしようとしているんだろうか。
だけど...今はそんなこと考える暇なんて無い。

外を見ると、土砂降りの雨が降っていた。

あたしは構わず、コンビニを飛び出した。