「...あたし、戻る気ねぇよ?」

「いいよ、戻んなくて。俺も外の空気吸いてぇし。」


外にいるためのありきたりな口実に苦笑してしまう。
頭は回るけどたまにバカになる織井らしい言葉だ。


「...あたしってどう見えてんのかな、繋に。」

「ん?あぁ...どうだろうな。でもさ、繋はヒーラギのこと、怖がってはねぇと思うよ。俺らみたいな不良って呼ばれるヤツらのこと怖がる様子もねぇし。何だかんだで度胸あるんだろうな。」

「怖がってねぇ、か。じゃあなんで泣いてたんだろうな。」

「...嫌われたくねぇからじゃね?」

「嫌われたくねぇって、あたしに?」

「そういうこと。繋はヒーラギを恐れてんじゃなくて、ヒーラギに嫌われることを恐れてんじゃねぇか?」

「じゃあなんで、あんなはぐらかしたような...。」

「...俺もその場にいなかったから詳しいことはよくわかんねぇけど、繋も無意味にヒーラギを傷つけるようなことはしねぇと思う。何か理由があったんだと思うけどな。」


理由なんて、あったんだろうか。
未来から来たあたしの息子だ、なんて、そんなバカみたいなことをいう理由が。


「...明日、どうする?」

「...あたしはパス。」

「そっか。じゃあ、そう伝えとくわ。」

「よろしくな。」


あたしはそう返した後、家に帰る気にもなれず、なんとなくフラフラと夜道をさ迷うように歩いていた。