「...織井...。」

「...大丈夫か?ヒーラギ。」


織井はあたしの顔を覗き込む。


「なんでここにいんだよ、織井。」

「なんでって、お前が突然帰るからだろ?」

「...繋、泣いてんだろ?一緒にいてやればいいじゃねぇか。」


イラついたまま織井と話しているから、織井にも冷たくなる。
だけど織井の声は優しいままで、ふっと小さく微笑んだ。


「繋のとこには他のヤツらがついてるから大丈夫だ。それに...ヒーラギはそれを望んでねぇだろ?」

「...意味わかんねぇし...。」

「...ヒーラギもなんか嫌なことあったんじゃねぇかなーと思って。繋が謝ってるっつーことは、繋がヒーラギに嫌だって思うことしたっつーことじゃん?」


今の状況でそんな考えになるのかよ。
どう考えたって、怒って出ていったあたしと泣いている繋がいたら、繋の方が被害者に見えるだろ。


「...ヒーラギさ、なんか悩んだり嫌なことあったときって一人になろうとするからさ。ずっと一緒にいんのに、わかんねぇわけねぇだろ?」


なんでも当ててしまう織井が、今はすごく頼れるように見えた。
まるで全てを知っているかのように、あたしの気持ちを当てて、溶かしていく。


「...わりぃな、分かりやすい、ガキみてぇなトップで。」

「分かりやすい方が面倒で難しいヤツより断然いいんだよ。」


織井と話していると、心が鎮まっていっている気がした。