その週の日曜日。
あたしたちは絆を深めようとかいう伊崎の提案で、遊園地に行くことになった。

さっきから繋はソワソワしていて落ち着きがない。


「おい繋、どうした?落ち着きねぇけど、トイレにでも行きてぇのか?」


戸田に聞かれ、「い、いえ、そうじゃなくて...。」と繋は否定した。


「初めてなんですよね、遊園地に来るの。テレビでしか見たことなくて...。」

「お前、その歳で遊園地来たことねぇのか!?」

「はい...だからちょっと、緊張しちゃって...。」


繋は辺りを見回しながら言った。


「じゃあ楽しまなきゃな。」


あたしがそう言うと、繋は嬉しそうに頷いた。


はじめに乗ったのはメリーゴーランド。
というのも、繋が興味津々で見てたもんだから、仕方なく、という感じだが。


「俺らが乗るのはちょっと絵面的になぁ~。」

「だよな...柊、一緒に乗ってやれ。」

「あたしかよ!?」


これは恥ずかしすぎる出だしだが、あたしは繋の隣の馬にまたがった。


「わぁっすごい!楽しいです!」


その歳で...?と思ったが、まぁ繋が楽しそうだからいいか。
あたしは仲間にからかわれながらだったけど。


「ふはっ。俺らのトップがメリーゴーランド!」

「もう一生見れねぇぞ?」

「う、うるせぇバカ!」


そんなやり取りをしながらも、一つ目のアトラクションを終えた。



「次は...お化け屋敷にでも入るか!」

「マジかよ戸田!?」

「繋はお化け屋敷、大丈夫か?」

「お化け...?あぁ、はい多分...。」


繋は曖昧な返事をしていた。

そして、あたしたちはお化け屋敷に入った。



「うわぁぁぁぁっ!」

「ちょ、来んなよ!」

「おいおい、抱きついてくんなよ佐野!」


随分と情けない叫び声が前方では響いている。
あたしはお化け屋敷とか好きだから怖くねぇけど。


「繋、大丈夫か?」

「はい。大丈夫です!けど...ちょっと足元暗いんで危ないですね、ここ。」


...コイツも全然平気そうだ。

お化けが出てきてもちょっと戸惑いながらお辞儀なんてしやがって。


「はぁっはぁっ、マジ俺無理...。」

「死ぬかと思った...。」

「大丈夫ですか?皆さん。」

「...大丈夫じゃねぇよ...。」


繋はお化け屋敷を出て、別になんともないらしくけろっとしている。


「ったく...こんな怖がりでよく不良とか呼ばれてんな...。」

「いや、人間ならいいけど、お化けとか有り得ねぇだろ!?」

「はぁ...繋が退屈そうにしてっから、あたし、繋とどっか回ってくるわ。」

「わりぃな、ヒーラギ。」


この男達の中で唯一堪えていない織井に任せ、あたしたちはジェットコースターへと向かった。


「ジェットコースターって、どんなのですか?」

「んー...絶叫系ってヤツだな。まぁ、乗ろうぜ。」

「はい!」


繋はワクワクしているみたいだが、ジェットコースターを見た瞬間、固まった。


「え...これ...乗るんですか...?」

「遊園地に来たら乗らなきゃな。」

「えぇ...。」

「大丈夫だって!死にはしねぇし。」


繋は嫌々、というようにジェットコースターに乗った。

カタカタと音を立てながら上っていく。


「わ、高...。」

「怖いか?」

「ちょ、ちょっと...。高いとことか、あんまり得意じゃなくて...。」

「大丈夫だよ!もうすぐ落ちるから。」

「お、落ちるって...!?」


繋が震えながらそういった途端、勢いよくジェットコースターは下降した。


「ひぃぃぃっ!」


両手を挙げているあたしの横で、繋が目をぎゅっと閉じて悲痛の叫びをあげる。

それを何度か繰り返し、ジェットコースターは止まった。


繋は足取りがフラフラしていて正直笑えてしまう。


「酷いですよぉ...明音さん、落ちるって...。」

「教えてやったんだからいいじゃねぇか?ってか、泣くなよー。」


繋は目に涙を溜めてあたしを睨む。
まぁ、全然怖くねぇけど。


「もう僕、どこか遠い国に飛んでいっちゃうかと思いました...。」

「いかねぇよ!」


頭がよさそうな繋らしくない言葉だ。


すると、「あれ?もしかして、桜田校のトップさんじゃね?」と背後から声がした。