あたしはその男の子を食い入るように見ていた。


「な、なんですか...そんなに見られても...。」


その男の子は戸惑うように目を逸らす。


「お、お前が...あたしたちを助けた...?」

「えっと...?ああ、あの頭が悪そうな人達ですね!お巡りさん呼んだ振りしたらすぐ逃げていっちゃいました。」


アハハッと楽しそうに笑う男の子。


「なんでそんなことしたんだ...?」

「そうだよ、危ねぇだろ、お前みたいな弱そうな奴がこんな真似。」


その男の子はあたしと織井にそう言われ、困ったように笑った。


「困ってる人がいたら助けてあげるようにお母さんに言われてるんで。」

「母親に言われたからって...何歳だよ、お前。」

「15、ですけど。」

「俺らの3つ下か。ってか中3かよ。小学生でもよさそうな見た目なのにな。」


仙田にそう言われ、その男の子はムッとしたように「失礼な...。」と呟くように言った。


「っつーかお前、学校は?」

「えっと...。」


その質問にその男の子は困っている。


「もしかしてあたしたちみたいにサボりとか?」

「あー...そんな感じです。」

「へぇ...そうは見えねぇけどな。」

「っつーか、金、払わせてたんだったな。370円だっけ?織井、わりぃけどちょっと貸してくんねぇ?明日には返すから。」


あたしは織井に金を借りてその男の子に返そうとしたが、その男の子に止められた。


「いいですよ、そのくらい!気にしないでください!」

「でも、借りは作りたくねぇし。」

「いや、むしろ借りがあるのは僕の方です。これは少しの、恩返しのつもりですから。」


その男の子はそう言って去っていってしまった。


「恩...返し...?」


あたしはその言葉に戸惑うしかなかった。