「僕さ、サッカーのレギュラー外されたんだ」

「え!……そうなんだ。もしかしたら……大地のせい?」

「え?なんで?」

「昨日教室でうるさかったから。レギュラーになったからみんなで応援にこいって」

「ああ、同じクラスだっけ」

「でも、なんで?大地って、サッカー始めたばっかりだよね」

「……僕には攻撃性が足りないってさ、コーチが。大地は、グイグイいくからな。周りお構いなしで、ファウルギリギリのことも平気でやるしさ。」

杏奈は目を伏せ少し微笑んだように見えた。

「隆一はさ、優しいんだよ。男か女かわかんないって言うか、存在感薄いし。いいよ、そいうの」

「それさ、ほめてんの?けなしてんの?」

杏奈は突然顔をあげ、隆一をじっと見た。

「ほめてるよ!めちゃくちゃほめてる!」

「そうは思えないんだけど」

「……楽なんだよ。隆一といると男も女も関係なくなるっていうか」

またうつむく杏奈。

「……むかつく」

「え?むかつく?」

「ごめん、あんたにじゃない」

下をむいている杏奈の手が震えている。泣いて……いるのか?

「あ、杏奈?」