そしてリリィの教え、リリィの優しい微笑みが詩月を包み込む。


 思いを伝えるヴァイオリンへと気持ちを入れ替える。

――子供のお遊びだったヴァイオリン演奏に、終止符を打つ。
リリィから教えられた音楽を今度は、自分の音楽へと完成させるために。
西洋の音楽も日本の音楽も、音楽に国境はない。
アランにリリィの思いを伝えるために

決意を新たにすると感情が溢れ、勇気が沸いてくる。


――カデンツだ


涙で客席が滲み、詩月の頬をつうぅと涙が伝う。

舞台の上で、曲を弾きながら、涙が止まらないのは初めてだった。

詩月は、心が熱いのに緊張していないのが不思議だった。