金木犀のアリア

メンデルスゾーンやベートーベン、ブラームスやスメタナ、ラフマニノフなど彼の演奏を詩月は、ブースにかじりついて聴いた。



アランの弾く曲は、どれもが繊細で感受性豊かで、何より魂が入っているなと唸らせる演奏だった。



技術もさることながら彼の演奏には、目の前に聴く人がいることを意識し、聴かせる演奏をしているようにも感じたし、音楽を心底愛しているという熱い思いを感じた。



そんな人が音楽を止めてしまっていることが、詩月は信じられない。



特にチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を演奏したものは圧巻で、身体中が興奮と歓喜でぞくぞくするほど素晴らしかった。



中でも、リリィとの思い出の曲だという「懐かしい土地の思い出」は昨日、安坂と詩月が弾いた演奏など比べものにならないほど繊細で、叙情豊かな温かみのある音色だった。



「――すごい……」