彼は私の手をとる、と言うより、掴む、握るといった形で私を誘導した。

なぜだかとても足速に。







そして迷うことなくホテル内を進んで行き一つの扉の前へ来ると、扉を開けた。




スイートルーム


彼が用意したのはまさにそんな部屋。


こんなことで別に驚いたりしない。

だって彼は、この国で名高い企業の後継者なのだから。
これくらい、きっと容易いこと。















覚悟、ない。











それでも時は、彼は、どんどんと私を運命へと誘う。

まるで私の運命がずっとそこにあったかのように。





私はきっと、
この状態を保てないかもしれない。

これ以上汚れることなんてないと、
本気で思っていた自分は正直馬鹿だ。
とんでもない愚か者だ。


世界はまだ、私の知らない闇で溢れていると言うのに。





このために私は
生まれてきたのだろうか?
このために私は
女だったのだろうか?
このために私は
彼に出会ったのだろうか?
このために私は





…全てを投げ出さなくては
ならないのだろうか?







彼のおかげで女に生まれた喜びも、
彼のおかげで彼と出会えた運命を心から
感謝したことも、
彼のおかげで生まれてきた喜びも、



全てを覆ってしまうのは、












【一生晴れることのない闇】