今まで秘密ごとなしとまではいかないものの、彼女にとって他よりかなり信頼のあった俺や総さん。
彼女の過去も全てとまではいかないが知っていたし、彼女の悩みも知っていた。
……はずだった。
いつもなんでも聞けば答えた彼女。
だけど彼女がいなくなって初めて、
彼女がまだまだたくさんの俺たちの知り得ない闇を抱えているのだと知った。
家のことで随分と苦労して来た彼女。
そんな中での紅蓮の事件。
彼氏との突然の別れ。
自分の所為だと責め続けた彼女は今、
どんな気持ちなのだろうか?
本当は誰より寂しがり屋で愛されたがり屋な彼女は、心の隙間をあいつに埋めてもらっていた。
それがあいつがいなくなった途端ガラガラと音を立てて崩れて行くようだった。
皆を心配せさないよういつも笑顔を見せていたが、目は笑っていなかった。
無理して笑っていた。
本当は家のことで縁談が持ち上がったり
他者との契約を結んだりと大忙しのはずだったのに、
時間を見つけては皆を元気付けに倉庫へ
向かっていた。
本当は兆候がなかったわけではない。
彼女は壊れる寸前だった。
誰と話しても心ここに在らずな時もあれば夜全く眠れない日も続いていた。
薬がないと眠れない日々が、
あの事件から続いていた。
それでも我慢して学校、倉庫、会社、
家の往復。
気がおかしくなるもの当然だ。
彼女がいなくなって数日のある日の彼女の初めての情報は、赤司組組長と一緒にいたということだけ。
なぜ紅蓮や彩狼の敵といるのか。
それがどうしてもわからなかった。
脅されてついて行ったのか、
それとも自分から…か。


