信じられるものも信じられないものも、
私と彼には関係なかったのに。
きっと彼は全ての人を信じ、
私は全ての人を疑った。
だけど私たちはなぜか、
気持ちが通ったのだから。
一時は分かり合えたのだから。
もし信じるものが生まれたとしたら、当時の彼はどれほど喜んでくれただろう。
もし信じられないものが生まれたら、どれほど悲しんでくれたのだろう。
私は今、信じれるものなど何もない。
きっと彼を悲しませることしか今の私にはできない。
会わない方がいいと望んだのは私。
だけど、
そのために悲しんだのも私だった。
今もまだ信じられない。
私がこんな大きな財閥の
後継者だなんて。
紅蓮のような大きな族の
トップに立っていたなんて。
私にそんな価値がないことは自分でわかっていた。
だからこそ皆の、
"総長はあなたしかいない"って言葉は、
どこか現実味のない言葉だった。
私を総長にしてくれたのは
私を総長に指名した人だけではなく、
紅蓮の皆だった。
だけど峯ヶ濱の後継者にしてくれたのは
誰でもない。
私の運命だったのだ。
ここに生まれたその瞬間、私が後継者になることは決まっていたのだから。
元から支持してくれる人なんていない。
全て権力などで強制的に得たもの。
自ら勝ち取った物など何もない。
そこにたとえ私を破滅へと導くものが
あったとしても、
私はそれに頼らなければならないのだ。
私の味方は、
もうどこにもいない。


