赤い電車のあなたへ




そういえばいつの間にか、ほたるはわたしより夏樹に詳しくなった。


ほたるからは夏樹のことが、夏樹からはほたるのことが。わたしを相手にすると、それぞれの話がよく出て。そして、ほたるは以前よりも姿や振る舞いを気にするようになった。


最近ふとした用事があって入った夏樹の部屋には、「女の子とのデートマニュアル」なんてものを机の上で発見したし。夏樹の服には以前より洗練されたデザインが増えた。


わたしが知らない2人。


わたしが知らない時間。


それがどんどんどんどんと増えていて。


どうしてかな?胸がチクチクと痛くて、なんだか涙が出そうになるんだ。


おかしいよね。


夏樹はわたしの従兄だし、さっき彼自身もはっきり言ったのに。わたしは夏樹の従妹で、妹のようなものだって。


だから夏樹はたいせつだし、家族に近い“好き”と情と親しみがある。


そう、家族なんだ。


わたしは夏樹に対して、夏樹はわたしに対して。家族っていう感情以外は持たないはずなんだし、もっちゃいけないんだ。