「鞠姉ちゃん、おいら当たりがでたぞ!」


「あ、兄ちゃんずっこい! それあたしがあげたのだよ。返してよ~!」


「へんだ! 手にしたからにゃオレ様のだもんね~だ!」


夕方。近所から来てる勉(つとむ)くんと美沙(みさ)ちゃん兄妹が、いつものようにケンカしてた。


わたしが幸子おばあちゃんの駄菓子屋で店番するようになって、1ヶ月経つ。


子どもたちともすっかり顔見知りになり、そして意外と侮れない子どもの情報網にびっくりした。


「鞠姉ちゃん、あたしも当たったよ!」


30円で買えるソーダアイスの棒を得意げに見せてくれたのは、清川家のお隣さんちの娘茉莉花(まつりか)ちゃん。


「わ、すごいじゃん! 茉莉花ちゃん前も当たってたよね」


新しいソーダアイスを手渡すと、茉莉花ちゃんはへへと照れ笑いをした。


「あたし、くじ運だけは強いもん」


「うわあ~~ん! 兄ちゃんがぶったあ!!」


あちらはあちらで大変で、きょうだいゲンカをしてた美沙ちゃんが額を押さえながら大泣きしてる。

そんな美沙ちゃんに近づいた茉莉花ちゃんは、半分に割ったソーダアイスを渡して頭をなでた。


「よしよし、いい子いい子。後でゴム跳びして遊ぼう」


「ひっく……ほ、ほんと?」


「うん!乱暴な男の子なんか知らん振りしちゃおう!」


5歳の美沙ちゃんに笑顔で7歳の茉莉花ちゃんが請け負った。