流星峡までの道沿いには右手に星間川が流れて、左手に集落が見える。


初夏の青い山々を背景にした水田には水が張られ、5月の空と太陽が照りはえてた。


昔ながらの造りの茅葺き屋根が残る家屋も少なくない。


ちょっと道を外せば、馬や牛が草を食む光景があちこちで見られる。


しばらくゆくと、川や風に削り取られた流星峡の見事な景観が見えてくる。ここまでたぶん3Kmは歩いたかな。


流石にここから先は道が細く急になり、道路と歩道が別れる。


あと2キロ……。


そこで一度立ち止まり、タオルで汗を拭ったわたしはほたるに目を向けた。


「ほたる、夏樹と先にいきなよ」


「え、なんで? 急になに言い出すの」


ほたるは意味がわからない、って顔をしてるけど。頬を染めてちゃあんまり誤魔化せてないし。


「ほたる、夏樹が気になるんでしょ?」


「え、そ……なんで? なんでそんな」


いつもハキハキ言葉を返すほたるでさえ、狼狽えるんだ。と微笑ましく思う。


わたしが打ち明けようと思ったのは、彼女が恋をしたから。


恋をしたわたしの気持ちが少しはわかってくれるかもしれないし、初めての友達だから打ち明けたかった。


「……わかるよ。わたしも好きなひとがいるから」


わたしはほたるに去年あった出来事を簡単に話して聞かせた。